え?思っていたのと違う
私の娘は小学校6年生の時にADHDと診断を受けました。それまで気づかなかったのかと言われればNOです。最初の子供だったので、子育てはこんなものかなと思っていたのと、この子の家の中で見せる顔と、私以外の夫や他の人に見せる顔が全く違ったので育てにくさを分かってもらえないことが多く、ずっと悶々として過ごしなかなか言えませんでした。今ではスポーツ大好きな活発な子に成長し、できないところをサポートすれば普通に生活しています。この子の成長過程の言葉で印象に残っている部分をご紹介します。今育児に不安がある方や発達障害かもしれないと不安に感じておられる方にお役に立てると光栄です。
1,生後3か月でしゃべる
私は妊娠中からずっと話しかけていました。生まれてからも表情を見ながら話してました。赤ちゃんの時の表情は無表情で、めったに笑わない子でした。いないいないばあをしても(なにしてんだこいつは)とでもいうような目で見られ、散々トライしたのに一回も笑いませんでした。
生後3ヵ月経ったある朝、いつものように「おはよう」と声をかけると小さい口を動かし始めました。
ゆっくりはっきりと「お」・「は」・「よ」と。
え?
私と夫はフリーズしてしまいました。私に限っては初めは喃語「あー」「うー」など話すと看護学校で習ったので、習ったんと違う、話したよね、今意味ある言葉を話したなと自問自答しながら混乱してました。初めて思考停止したのを覚えています。次も話すかなと何回も「おはよう」と声をかけてもスンとした表情でその時は他に何も言いませんでした。
翌日からは喃語も話し始めましたが、ずっと話しているのです。寝るまで。5ヵ月経つ頃になるとまだおむつなのに「トイレにいきてぃー」と聞こえるほどしっかり話をすることが増えました。「まだトイレ行ったことないでしょ。」と私も突っ込みをいれるほど。
言葉の理解はまだないと思いますが、聞こえた言葉を覚えることはできているように思えました。ここで普通の過程と違うと気づいてましたが、最初の子供で育児というものに疲労困憊の私には余裕がなく、この子の個性だと思うようになりました。
2,1歳から2歳
私があまりおしゃべりは得意ではないので、2人で過ごすことでいろいろ耐え切れず、復職し保育園に通うことになりました。そこで娘のおしゃべりの質は格段と飛躍し、保育士と普通の会話ができていたと聞きました。
保育士「今日はいい天気だね。」
娘「昨日は雨が降ったけど晴れてよかったね。」
こんな会話が普通だったそうです。大人にとっては普通の会話ですが、2歳の子供が話すにはちょっと大人びているように感じます。昨日のことを振り返り、さらに話を合わせています。もうこの時点で、好きにしてくれ、習ったことにはまったく当てはまらない。この子はこの子だと思うようになりました。
3,幼児期~小学校
外では障害が目立つことはないようでしたが、自宅では違いました。寝るまでおしゃべりはとまらず、擬音を繰り返していました。静かなのは寝ているときか、夢中で悪さをしているとき(服に切れ込みをいれる、らくがき、隠れてなにかしている)でした。食事中も話がとまらないので食べる量も少なければ、食事も遅く体重が増えず成長が心配になるほどでした。また、思ったことをそのまま口にするので、失礼なことを言ったり、失言も多かったように思います。自宅では親も言葉遣いに気を遣うようになりました。
6年生でADHDと診断を受けましたが、いままでの検診では特に指摘もなく、学校生活でもいい子に入る分類だったみたいで、さほど困ったことはないように見えましたが、後から聞くと本人の努力もあったようです。当時6歳の息子がASDと診断されたので、ついでに診てもらったらそのように診断を受けました。驚きはありましたが、やっぱりねと私の育てにくさは当たっていたと思いました。当時外面はいい子だったので、義母や義姉からは「育てやすいでしょう」「楽できるね」など腹の立つ言葉をなげかけられ、何も知らないくせにと思っていました。こんな思いをする人も私だけではないと思います。
4、中学校~高校
中学では自分は話しすぎると止まらないと自覚したようで、学校ではおとなしく過ごし一日誰とも話さないこともあるほど。自宅では弾丸トークでした。外で頑張って自分を演じている分、自宅ではさらけ出している状態でした。「自分は自分でいいんだよ」と幼少期から伝えていたのですが、やはり無理をして周囲に合わせようとしているみたいでした。
16歳でWISC検査を受けました。将来の進路も考えなければいけない時期だったので、自身を知ってもらうために受けました。子供の知能を測定するための検査で何が得意なことか、数値で知ることができます。結果、言語理解は基準となる平均値よりもはるかによく、本人の中でも一番良い点数でした。これはこの子の武器になると確信した時でした。今では少しずつおしゃべりな自分をさらけだして話せる友達にも恵まれ、充実した高校生活を送っています。ですが、伝えたいことを伝えらえないこともあり、病院では自身の病状をうまく言えなかったり、本当はこう言いたいのに上手く伝えられず、自宅に帰って思いを吐き出し、ストレスをためないようにコントロールしているようです。親はとにかく聞いています。場面によってはできないこともあるようで、フォローが必要な時も判断しないといけません。
学校にも相談しますが、なかなか伝わらないというか、作り上げたその子の世界があるので(外面は優等生)、ADHDであることが配慮されません。緊張した時は特におしゃべりになり、話そうと思っているわけではないのにおしゃべりがとまらないこともあるそうで、注意を受けたりしています。調子が悪いことも上手く言えないこともあります。人前で話すことは得意なのに、自分のことは言いにくい。そんなときもどかしさを感じるようです。事前に学校には健康調査票等で伝えているはずですが、成績や見た目で判断され、忘れられてしまうんでしょうね。
私の子育ては答え合わせのように後からいろいろ分かってきたわけですが、本当は早いうちに療育を受けたほうが生きやすいのだと思います。自宅では療育までとは言えませんが、その子が楽しく過ごせるように、自宅では思いっきりおしゃべりを聞き、擬音を言えばそれに合わせてラップを作り歌を歌ったり、その時々に応じて対応してきました。もちろん、静かにする場面ではしゃべらない手遊び、顔遊び等で工夫したりしていました。大きくなるにつれ、場面にあった対応は自身でコントロールでできているように思います。
定期発達の状態を知ることは大事なことで、それに当てはまらないなと感じたら保健師や検診などで相談してみることが大事だと思います。私の回りには看護師や保健師がいっぱいいた環境でしたが、私自身が子供とはこんなもんだろうとの思い込みがあり、検診でもひっかかることなく、これは個性なんだとあきらめてしまった部分もあります。ただ育てにくさはとても感じていたので、子育てに違和感を感じたら誰かに言葉にして相談してみて下さい。
発達障害にはこんな種類があります。
発達障害の種類
- ADHD(注意欠如/多動性障害)
- ASD(自閉症スペクトラム症)
- LD(学習障害)
- 知的能力障害
- 運動障害(発達性協調性運動症)
- コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症
今では発達障害に関する書籍もいっぱいあり、2016年の厚生労働省の調査では診断を受けた人は国内に48万人以上いると推計されました。今では10人に1人は発達障害と言われています。勉強するうちに私も幼少時落ち着きなかったなとか当てはまるものもいくつかありました。発達障害の主な原因は脳の機能が上手く作動しないことだと分かっています。母親に原因があるなどどいう方もいまだにいると思いますが、気にしなくていいです。知識がないだけですから。
私もまだ知らないことがいっぱいあるので、この子たちを理解して安全に安楽に生活できるような、やさしい世の中になるように経験を広めていきたいと思います。まだ他の発達についても書いていきますね。
言葉編ご拝読ありがとうございました。 “ADHDに気づくまで①言葉” の続きを読む